〔報告1

大阪市内の各学校における本名使用の現状

 

大阪市外教  花峯 千恵子

 

〈本名使用率〉

今晩は。市外教の事務局の花峯です。今日は機関紙を2枚用意させていただきました。本名ということに限って現状報告をさせていただきます。

市外教も24年間、"本名を呼ぴ名のる"実践の推進を図ってまいりましたが、一昨年昨年を比較して、本名使用率が減っているという現状があります。

例えば、機関紙No.49の表の本名率の項目で小学校のそれは10.9%を示していますが、前年の93年度には12.4%あったもので、約1.5%低下しているわけです。中学校でも、表では13.6%ですが、前年度は14%でした。全体としてはこのような数字になっていますが、民族学級のある学校などは、少しずつ増加傾向にあります。

また、区によってもちがいがあります。小学校で10%以上の本名使用率を示している行政区をあげますと、

○北区       14.7%    ○旭区       10.1%

○東成区     10.2%    ○生野区     15.8%

○中央区     22.4%    ○浪速区     25.8%

○東住吉区   12.2%     ○住吉区     12.2%

○西大阪地域 23.1%

というようになっています。

東成・生野については在日朝鮮人多住地域でもあり、かなり高い数字が表れています。また、北区や中央区で高くなっていることについては、やや疑問もあるのですが、新たな渡日の韓国入の数が多いということもあると思います。

中学校で見てみますと、

○生野区  24.4%    ○中央区  26.1%

○浪速区  19.0%    ○住吉区  10.9%

○西成区  22.7%

西成の中学校では、民族学級・クラブの取り組みが、小学校との連携のもとに進められていることがありますし、生野の場合は、中学校入学のときに、本名指導が行われている学校が多いと聞いております。他地区との差はそのへんに表れていると思います。

けれども、全体としては、最初に言いましたように、少しずつ低下してきているということであり、わたしたちの実践も、もう少し見直して、小中連携ということもきちんと進めていかねばならないということです。

  小学校 中学校 養護教育
諸学校
夜間学級 幼稚園 高校
回収率 296/296校
100%
129/129校
100%
10/10校
100%
4/4校
100%
62/62校
100%
25/25校
100%
韓国・朝鮮人
在籍数
6258人 3131人 34人 464人 32人 673人
本名率 10.9% 13.6% 5.9% 100% 18.8% 7.3%
その他の
外国人在籍数
474人 209人 1人 220人 6人 18人
外国人籍児童
生徒の名簿
72.5% 76.0% 20.0% 50.0% 4.8% 56.0%
外国人教育
研修
75.2% 47.3% 40.0% 75.0% 66.1% 52.0%
外国人教育
推進組織
84.9% 80.6% 70.0% 100% 16.1% 75.0%
年間指導計画に
サラム等の指導が
位置づいている
60.4% 32.6% 10.0% 50.0% 0% 12.0%
外国人教育
基本方針
64.8% 43.4% 30.0% 50.0% 22.6% 44.0%
※幼稚園については就学通知票がなく、在籍数が明らかになりにくい。
〈市外教ニュースNo.49. 94.12.17より)

<公簿での本名記載率>

公簿の問題ですが、機関紙No.50の表を見てください。この集計はわたしどもも初めてであり、こんな数字があがるとは思ってもいませんでしたから、大きなショックを受けました。何故かと言うと、指導要録に関しては100%本名記載が行われていると思っていました。ところが、ブロックによってはそうではありませんでした。とくに中学校の方で100%を割っていました。このことは、市教委の方からも、強力な指導が行われているにも関わらず、この現状でした。修了者台帳・卒業証書台帳・指導要録の3つの書類は、いずれも教職員が自分たちで記載するものなのです。だから、100%完全に本名記載が徹底されていいはずなのです。指導要録でも本名がもれている。まして、修了者台帳や卒業証書台帳になると、70とか80、ひどいところでは60%程度の実態になっていたのです。

 これはどういう事なのかと言いますと、わたしたちは、子どもたちに"本名を呼び名のる"実践を進めているのですが、それ以前に、自分たち教職員が、朝鮮人の子どもを朝鮮人として認識するという姿勢のないことの一つの表れではないかと思うのです。公簿という自分たちで処理することができるものの中でさえ100%になっていないのです。

 出席簿とか健康診断票、歯の検査票では、さらに率が下がります。これらは子どもの目に触れやすいです。中学校などでは、生徒に出席を取らせることもありますので、クラスの中で、本名はもちろん、朝鮮人であることも明らかにできていない、隠しておきたいということがあった場合、それに対して配慮をするのが教職員の役目である、教育的配慮であるというような考え方が、大きく働いているのです。それで、そこのところの論議になったときに、なかなか前へ進めないというのが現状ではないだろうか、ひょっとすると論議にもなっていないのではなかろうかと思います。

 もう1つ、卒業証書の本名記載に関しては他の出席簿とか健康診断票などと比べると、本名率が高いのです。親と話をしていくものについては高くなっているのに、自分たちが処理する部分については低くなっているということについては、一体どういうことなのかと考えなければならないと思います。

 特に問題なのは、年度末に、男女混合名簿の論議がされているのですが、朝鮮人の子どもの本名記載については、ふれられていない現状です。指導要録は本名記載だが、出席簿は通名。名前の順序も本名の並び方になっていない。そうしたことについての論議が、ますます、職員会議の場で行われる必要があります。

 これらの取り組みは、もう少し前へ進んでいるのではないかと思っていましたが、実際に統計をとったら、こんな状態でした。それ以降、研修会とかブロックの主担者会でも、声を大にして叫んできましたので、今年は、少し上がっているのではと期待しています。

〈小中高の連携〉

 小中の連携に関連することで、ブロックの主担者会で問題になったのは、朝鮮人の子どもを話題として引き継ぎをしているところが非常に少ないことでした。

 また中学校の教職員からの要望では、 「健康診断票や歯の検査票の場合は、9年間、同じものを使うわけですから、小学校のときに本名記載をされていないと、中学校の段階で書き直すのに抵抗がある。小学校の方で、きちんと記載されたい。」というようなことを言われています。

 中学校から高校へ入学するときに、次のような事例がありました。府立高校の例ですが出願の際に、窓口で志願書と外国人登録済証明書と調査書の提出がなされるわけです。その子は、中学校の取り組みの中で、高校でも本名でがんばろうということで、本名記載をしていったわけですが、その窓口対応の教職員が、「通名ではいかないのですね。……」そのときの言葉を正確に伝えられないので要旨にしますが、ともかく、本名記載をしているにも関わらず、「通名ではいかないのか」という問い掛けをされた。その子は、非常にショックを受けまして、学校に帰ってきて、教職員たちに向かって、「先生たちはウソをついた。高校でもがんばって本名で行け、周りが支えてくれるとか、理解してくれるとか言ったけど、実際には、こんなふうに言われたではないか。」とぶっけたということがありました。もちろん、中学校から高校の方へ申し入れをされたということでした。

 その子はまだ入学の段階ではない。入学手続き中で、その子が本名で高校生活を送る意思があるのかどうか、それを聞くのは当然であるだろう。そうではなく、受験の段階である。そうした段階の窓口のところで、このような対応をされるというのはどうか。子どもはみんな、それぞれ、受験のときにはドキドキしながら行っている。そして、後ろの方にも、願書を提出に来た子どもたちが、ずっと並んでいる中で、記載不備についての質問を受けたりする。自分がその立場に立てば、すぐわかることかと思いますが、「何か言われないかな」とドキドキしている。そんなときに、 「通名ではいかないのか」と質問されると、非常に大きなショックを受ける。そんなことを聞くまでもなく、その書類をそのまま受け取るべきではないのか。

 市教委に問いただしたら、市内の場合は、「そのような対応の誤りはしていない。」とのこと。府下の学校では対応のバラツキがあるとのことでした。

 たとえ、書類の中で不備があったとしてもその部分については、学校間の問題として、高校から中学校の方の教職員に問い合わせをしたら済むことだということで、このような処置の仕方はすべきではないと思いました。

 簡単な、外枠だけの話になってしまいましたが、後の論議の中で、具体的に本名の問題とか、数字のことについても質問があればお答えしたいと思います。

 これで報告を終わらせていただきます。

 


(田村)

 どうもありがとうございました。現場にはさまざまな実態があろうかと思います。花峯さんの報告についての質間もあろうかと思いますが、とりあえず次の報告に移って、後の論議の中で整理をしたいと思います。特に、卒業証書とか、就学の際の取り組みなど、ちがいがあろうかと思います。そのようなちがいが、現場の実態にどう反映しているのかを出してもらいながら、後で論議したいと患います。 それでは次に、府立外教の運営委員長の印藤の方から報告します。彼も全朝教大阪の運営委員の一人です。

         

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