「朝鮮学校は公益に資さぬ」

 

文部省の見解をどう思いますか?

 

在日朝鮮人民族教育大阪府対策委員会

事務部長  蔡成泰(チェ・ソンテ)

 

「健全な日本人を育てるという文部省の立場からすれば、朝鮮人同胞を育てるのが目的の朝鮮学校は日本の公益に資するとは思えない。政府として保護することには否定的にならざるを得ない。」

 

【朝鮮人を朝鮮人として育てる。この当然なことを"公益"で是非云々?

日本人を日本人として育てることは当然のことであります。そして、外国人が自分の子どもたちを自民族として育てること、すなわち、朝鮮人を朝鮮人として育てること、これもまた当然のことであり、是非を云々する問題ではありません。民族教育は万人に共通した絶対的な基本的人権の一つ。この当然なことを"日本の公益に資さない"、つまり日本社会に役立たない、よって"朝鮮人を育てる朝鮮学校"を保護すべきではないと否定しています。「日本の公益」という"自己流"の物差しで計っています。日本の「教育基本法」第6条は「法律で定める学校は、公の性質を持つ・・」と"公益"を明記。朝鮮学校は、「私立学校法」に基づいて認可された""の学校。文部省見解は、国内法からも、また国際人権宣言や規約、子どもの権利条約など国際法から見ても明らかに誤った見解と言わざるを得ません。

 

朝鮮人を育てる・・公益に資さない。公益は外国人も日本人に育成すること?】

"朝鮮人を育てる朝鮮学校は日本の公益に資さない"との見解は、言い換えれば、朝鮮人(外国人)も日本人として育てることだけが、日本社会に役立つとの考えであります。またこの考えは、現在の朝鮮学校生だけでなく、すでに卒業して各分野で日本社会の発展に貢献している朝鮮人の役割も全て否定するものであります。このような考え方は、過去の植民地統治において朝鮮民族を抹殺しようとした民族同化政策と同じで、時代錯誤的思考そのものではないでしょうか?

 

【自治体は朝鮮学校をすべて認可、"公益"を認める。文部省だけが否定?】

29都道府県(朝鮮学校所在)のすべてが朝鮮学校を認可(各種学校)し、教育助成も適用しております。高体連、中体連も朝鮮学校生の大会参加を認め、日本学校との交流もより活発に行われています。このような自治体や教育団体の対応は、地域社会(日本社会)における朝鮮学校の公益性を如実に表しています。今年、朝鮮中学校サッカー部が大阪府大会で優勝、府代表として全国大会に出場しました。公益を認めている自治体? 認めない文部省?正しい判断はすでに現実が下しているのではないでしょうか?

 

【健全な日本人を育てるというが?国際化時代に逆行する文部省?】

多民族が共生する社会。互いの違いを認め、他民族を理解し、尊重することは国際化時代の要求であり、文部省が言う「健全な日本人」が持つべき大切な資質のひとつでありましょう。しかし、外国人に対して、国際常識をも踏みにじる同省が「健全な日本人」教育を施せるのだろうか? ある人は"まず、差別がなくなるように文部省に対する教育が必要"と言います。文部省の考え方は「健全な日本人を育てる」教育にも、大きな支障となるだろう。

 

朝鮮学校以外の外国人学校について「生徒の大半は日本語が話せない短期滞在者。海外の日本人学校が受ける保護との相互主義的な考えで便宜を供与している」「朝鮮学校に通うのは日本で生まれ育ち日本語が話せる定住者。1条校で教育が受けられるはずだ。」「米国やカナダなどのインターナショナルスクール(国際学校)は仕事の都合などで短期滞在する人の子どもが多く、国際交流を進める意味で国にとって公益性が高いと判断し、寄付金制度を認めている。一方、朝鮮学校は、日本で永住権を持つ長期滞在者の子どもが多く、国にとって公益性が高いと認められないため、インターナショナルスクールとは区別している。」

 

"区別している"というが、区別ではなく差別である=基本的人権に対する差別?】

短期滞在者の子ども、日本語の話せない滞在者の子どもたちの学校は「公益性」が高く、長期滞在、日本語がわかる子どもたちの学校は「公益性」が高くない? 滞在日数や日本語の習得程度が"公益"の基準となるのでしょうか? 外国人の役割を判断するにおいて、日本に短期間住み日本語をわからない子どもの方が、国際交流を進めるのに公益性が高く、日本に長く住み日本語が上手になれば公益に資さなくなるということなんでしょうか? 何という屁理屈でしょう。

朝鮮学校は公益性が高くないから他の国際学校と区別している? 「区別」と言うが区別ではありません。明らかな民族差別、基本的人権への侵害であります。文部省自らが差別を教え、いじめを助長していると言えるのではないでしょうか?

 

【相互主義を主張? 過去の一方的行為(植民地支配)からの産物はどう対処?】

他の外国人学校について、相互主義的な考えで便宜を供与することはいいことでしょう。ただ、相互主義は一方的行為を否定するものであります。しかるに、相互主義を唱えるなら過去の朝鮮に対する植民地統治(一方的行為)の反省に基づき、その産物である在日朝鮮人や朝鮮学校をむしろ優遇するべきでありましょう。しかし、文部省は保障することはおろか、保護することすら否定しています。文部省が言う「相互主義的な考え」は、まったく説得力に欠けたものと言わざるを得ません。

 

1条校(日本学校)で教育を受けられるはず? 朝鮮学校へは通うなという妄言?】

文部省は朝鮮人の子どもに対して、日本で生まれたから、育ったから、日本語がわかるから、定住者だから、1条校に通えるはずだと言います。言い換えると"なぜ日本学校に通わないのか""朝鮮学校に通う必要はない"ということであります。まさに、過去の露骨な民族同化教育政策と同じです。また、1条校に通えるはずと言うが、1条校に通う朝鮮人の子どもたちの実態はどうでしょうか。民族の言葉や文化を学べる条件が整っているのでしょうか? 文部省はそのことを保障しているのでしょうか?

 

【朝鮮学校は国際学校より公益性が高いと認められない?】

文部省は"国際交流を進める意味"で公益性が高い、低いを判断しています。日本社会において国際交流と言えば、姉妹都市、友好自治体との国際交流活動、地域住民向けの国際理解講座、日本語講座の開設、地域在住の外国人住民と一般住民との交流促進……などであります。日本にある主要な国際学校は、日本国際学校連合会(JCIS)を組織していますが、現在の加盟校は26校に過ぎません。新国際学校は3校のみです。(臨教審、1987(昭和62)8月の最終答申に由来した学校)。朝鮮学校は全国に140校以上あり、歴史も長く、地域住民との交流、地域の日本学校との親善交流など、かなり進んでおります。ほかのことは言いません。これだけをとってみても公益性が低いと言えるのでしょうか? 文部省のねらいは朝鮮学校の閉め出しにあるとしか思えません。

       
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