全朝教大阪2000年度 第1回シンポジウム報告
歴史認識と在日朝鮮人教育
「日の丸・君が代」強制と「三国人」
「神の国」「国体」発言の土壌を問う
                        2000年7月7日
                        大阪市立中央青年センター
 
開催にあたって
 
 校庭のピンク・白・紫と色鮮やかなムグンファの美しい季節に、2000年度第1回シンポジウムを開催しました。
 全朝教大阪(考える会)は、在日朝鮮人児童生徒の教育を徹底して考えることが、今の日本にとって緊急の課題であるということの確認から、「考える」ことから出発して「実践し、行動する」ことに勇気をもって一歩踏み出すことの大切さを確信してきました。

 今もこの状況には、変わりはありません。

 この間、「本名を呼び名のる運動」、「在日朝鮮人の子どもたちに民族教育の学習権を保障し、周りにいる日本人の子どもたちに正しい朝鮮認識(歪められた朝鮮観をただす)を育てていき、ともに理解し合う関係を作り上げていく実践」を一貫して大切にし、機関紙『むくげ』やシンポジウムを通じて提起してきました。

 在日朝鮮人の人権に関わる問題は、日本人の問題であり、私たち一人ひとりにとって、自らの人権意識と生き方がためされるメルクマールだといえるでしょう
「外国人は日本社会の歪みを写す鏡」だとよくいわれます。私たち大人がその歪みに気付き、正しくしっかりとした歴史認識と国際感覚をもち、次代に伝えていかなければなりません。

 全朝教大阪(考える会)は、来年30周年を迎えます。今後もこれまで構築してきた教育現場、地域における運動のさらなる拡大を図り、在日朝鮮人教育運動の先端的役割を担っていく所存です。今後ともご支援よろしくお願いいたします。

 さて、2000年度第1回のシンポジウムのテーマを「歴史認識と在日朝鮮人教育−日の丸・君が代強制と三国人・神の国・国体発言の土壌を問う」と設定いたしました。

 日の丸・君が代の現場への押し付け。繰り返される政治家の暴言は、在日朝鮮人の子どもたちに暗い影を落とし、子どもたちの未来を脅かしています。生命の危機さえ感じさせる出来事、発言なのです。

 特に、今回の朝鮮人に対する時代錯誤的な差別発言は、植民地支配をした時代を故意に忘れさせる間違った歴史認識であり、差別意識の象徴としての「三国人」発言です。
 今回ご案内のチラシにもありますように、次の3点について、本シンポジウムで明らかにしたいと思います。
◆地域社会に、学校に、そして子どもたちや教職員にとって、さらには、大阪の学校に多数在籍する在日朝鮮人・外国人の子どもたちや保護者にとって、「日の丸・君が代」の法制化と教育現場への異常な押しつけの意図は?

◆首都・国際都市・東京石原都知事による「三国人」発言。日本国森内閣総理大臣の 「神の国」、「国体」発言。行政権力のトップを担う彼らの描くこの国のビジョン、その核心にあるものは? 彼らを選出し、支えるこの国の主権者は何処へ向かうのか?

◆この国の過去・現在・未来を、多民族・多文化共生社会の実現を展望する運動を、それぞれの立場で考え、意見交流を行いたい。
 朝鮮人に対する蔑称(べっしょう)を私たちがどう受け止め、行動していくかが問われます。こうした朝鮮人に対する差別語の背景には、植民地支配に対する日本人の意識の変わらぬあらわれをみることができます。私たちがこうした「支配者のことば」で語ることをやめない限り、日本と朝鮮の友好といっても虚しく響きます。

 朝鮮人に対する蔑称(べっしょう)に凝縮された自らの内部に根強く残る植民者の思想、それを変えていく努力を一人一人の日本人が地道に積み重ねていく中で、ようやく朝鮮と「出会う」地点に私たちが立つことができるでしょう。(差別語を言い換えにすますのではなく、自らの意識を変え、日本人自らの手で植民地意識の克服へと踏み出さなければなりません。)

 今回のシンポジウムで、みなさまと共に歴史の事実に学びたいと思います。
 そして、教育現場で、朝鮮人も日本人の子どもたちも心が解放され、ともに生き生きと育ち合っていく関係を築く取り組みを進めたいと思います。
                            冨田 稔


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