南北共同宣言と在日朝鮮人教育

 
 「在日の街に統一旗、大阪・生野の民団・総連、初の合同パレード」の見出しが紙面に躍る(2000年10月23日、朝日)。「生野まつり」のパレードに参加した「生野韓国民団・朝鮮総連統一行進団」の報道――白地に青の統一旗を先頭に民団・総連双方の若者が力強くチャンゴを響かせ、チマチョゴリの女性たちが小さな「統一旗」を手に「チョグットンイル(祖国統一)」と唱和する。時代は大きく変わりつつある。

 これは南北共同宣言(2000年6月15日)の結果であることは言うまでもない。またこれは、続くシドニー五輪での統一旗、南北合同行進と共に、全世界の人々の共感と感動を生み出し、在日をはじめ心ある人々を今なお限りなく勇気づけている。

 「みんぞくがっきゅうができた」「ぼくもはいる」「わたしもはいる」「今日から学ぶちょうせんご」「朝鮮人としてのほこりをもってがんばる」「朝鮮人差別とたたかう」(72年11月22日、朝日)。「胸はって民族学級開講――放課後の朝鮮の勉強、週二回、父母のカンパで――」の見出しが同じく紙面に躍る。当時の7・4共同声明は子どもたちの喜びの声と共に今日に続く民族学級の実践と運動を生み出す大きな契機になったといえる。その後30年近く、分断と対立は民族学級に少なからぬ苦難を強いることになるが、それは歴史を先取りした実践と運動に対する試練といえよう。今それが21世紀に向け大きく花開こうとしているのではないだろうか。

 私たちの会の前身「公立学校に在籍する朝鮮人子弟の教育を考える会」(71年9月24日創立)は、会の名称をめぐって「私たちが朝鮮という時、日本と朝鮮との関係において、朝鮮民族全体を指している言葉として使用していきたい」とし、「不当な38度線を思考と現実の中に固定せず、南北統一の視点を常に堅持していきたいからである」と確認している(「むくげ」1号、71年11月17日)。こうして「考える会」は「教室の中に38度線を引くな」という統一の視点で長橋民族学級の実践と運動に連帯し、今日の在日朝鮮人教育実践の展望を切り開こうとしてきたといえよう。

 在日朝鮮人教育は、人権と反差別とともに、何よりも、民族と国際連帯にかかわる教育である。その意味で、日本人と同等の市民的権利とともに、何よりも、自己決定権としての民族的権利こそ、その要である。従って、「すべての子どもたちが民族名を使用し、民族性を保持するために必要な民族教育権の確立を、在日同胞と日本人の共通課題とする」(「民族教育権利宣言」)ために、さらに闘おうではありませんか。     (内山一雄)

 むくげ162号目次へ


inserted by FC2 system