大阪府下でも、全国各地でも、在日朝鮮人が「マイノリティー」として存在する「少数点在」の状態は当たり前のことです。大阪市の生野区のような「コリアタウン」がどこにでも成立するわけではありません。しかし、日本の学校で少しでも「民族教育」を保障しようとする民族学級の運動は、少数・多数に関係のない普遍的な意義をもつものだと言えます。学校の中、あるいは地域で、また民族のつどいとして、1970年代から各地で続けられてきたこの教育運動は、今や、面として広がりはじめています。私たちは「すべての学校に民族学級を」を、「特別な配慮」ではなく「当たり前のこと」として目指さなければならないのではないでしょうか。
 以下、「民団新聞」の記事から紹介します。なお、皇甫康子さんは、記事の中では「桜ガ丘小学校民族学級講師」となっていますが、実際には、同和教育指導員として勤められているということです。(編集委員会)


 
    本名で通う同胞生徒のために
民族講師配置、教室も開設(川西南中)
 
市教委、学校、保護者が協力     共感、共生の輪広がる
 
  【兵庫】兵庫県川西市立川西南中学校(西村正昭校長)は、同校に在籍する在日同胞生徒の民族的主体性を育てる教室「ヘバラギ(ひまわり)」を校内に設けている。同教室は本名で通うたった一人の在日同胞生徒を孤立させないために始まった。日本の公教育の場で民族教育を保障するため市教委、現場教師、保護者が協力しあった点で、貴重なモデルケースといえそうだ。

  この教室は別名「共感・共生の部屋」とも呼ばれている。同校にただ一人本名で通う孫充香さんを支えていこうと、同校が98年3月に開設した。開設以来、常時、数人の在日同胞生徒が出入りしている。国際理解教育を推進している立場から、日本人生徒でも関心のある生徒については入室を制限していない。

  充香さんが同校に本名で入学した年の97年6月、音楽室での部活中、生徒間でスカート丈が話題となった。この時、ある3年生が孫さんに聞こえよがしに「朝鮮学校の子、上げすぎちゃう」ということがあった。

  孫さんは不愉快な思いを隠しきれなかったという。

  学校側としても本名で通う充香さんの思いをどう受け止めるか、協議していた矢先だった。緊急の職員会議を開き、今回の件が「差別事象」であることを確認しあった。

  まず、充香さんの保護者と、桜ガ丘小学校民族学級講師の皇甫康子さんを講師に招き、全校生徒を対象に「在日外国人保護者の願い・思いを聞く会」を持った。さらに、西村校長は川西市教育委員会に要望書を提出、「ただ一人学校に本名で通う充香さんを心身ともに支え、基礎的な民族素養を身につけさせるためにも民族講師の配置が欠かせない」と訴えた。要望を受けた川西市教育委員会は翌98年7月、「生徒指導補助員」として民族講師配置のための予算を計上した。

  「ヘバラギ」教室に出入りするようになった充香さんは、民族講師として配置された康性順さんとの信頼関係ができるにつれて、自分の思いや考えを積極的に出すようになった。このことは、通称名で通学する在日同胞生徒にも刺激となっているようだ。

  この生徒は、充香さんから(本名を名乗り、友人に明かしたときの)「スッキリした気持ち」を聞いたことで、自ら「仲の良い友人に話して
 みよう」と思いがけず前向きな反応を示し、周囲を驚かせた。充香さんは今春、同校を卒業、県立芦屋高校国際文化科への進学が決
 まっている。高校2年進級時には、第二外国語で韓国語を選択したい考えだ。(2000.03.15 民団新聞)


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