各地の在日朝鮮人教育実践(第2回)

二十有余年に及ぶ「ウリモイム」の実践

門真市の在日外国人教育のとりくみ
 

 「考える会」旗あげから30周年を迎え、大阪府内各地域の在日外国人教育研究組織を結集し、大阪教組の協力を得て、大阪府在日外国人研究協議会(大阪府外教)が結成されてからも9年が経つ。門真(かどま)市外教は、その当初から地域での「ウリモイム(わたしたちのつどい)」の取り組みを継続して注目を集めてきた。二十有余年の間に、地域在住の在日外国人の実態は大きく変貌し、実践の方向、内容もそれに対応して変化している。今回は、この門真地域を取り上げ、門真市外教の妹尾事務局長へのインタビューを中心にまとめてみた。 (稲富 進)
*参考 大阪府外教研究集会冊子・門真市外教だより
 
(1)門真市立各学校園の在日外国人の在籍状況はどうですか。

 近年、在日外国人の在籍状況は様変わりし、表(2000年度門真市外教資料による)に見られるように、「韓国・朝鮮」籍の子どもよりも「中国」籍の子どもが多くなりました。
 時代の変化の中で、在日韓国・朝鮮人社会においても世代交代がすすみ、保護者や子どもの意識の多様化がよりはっきり見えるようになってきました。日本国籍取得者の増加、日本人との国際結婚で生まれた子どもの増加など、「国籍=民族」というとらえ方はますます実態とあわなくなっています。また、中国・ブラジル・ペルーなど新たに渡日した子どもたちの数も増え、これまで積み上げられてきた在日韓国・朝鮮人教育の実践に学びながら、実態に対応した新たな実践の深化・発展が求められています。民族の自覚と誇りをもち、反差別の資質を育むとともに、一人ひとりの子どもの「自己実現」を保障する多文化共生の視点を基軸とした新たな教育内容の創造に努めています。
 
(2)具体的な取りくみとしては、どのような実践がすすめられているのでしょうか。

 門真では、市外教が結成される以前から、市人権協が中心になって取りくんできた「ウリモイム」がありますし、市外教結成以降継続している「ハギハッキョウ」の取りくみがあります。
 今年の「ウリモイム」は六月と十一月に計画しました。つい先日終わったばかりの「ハギウリモイム」には、子ども・保護者・教員あわせて百人以上が参加して行われました。
子どもは小・中学生が25人程度でしたが、卒業生部会の5人が参加してリーダーをつとめてくれました。これは門真地域の取りくみの特色だと思いますが、門真市の中学校卒生がつくっている卒業生部会の高校生・学生・社会人が毎年参加してくれています。
 今年は、子どもたちを、縦割りで5グループに編成し、それぞれ卒業生のリーダーについてもらいました。遊びのコーナー(ユンノリ)、もの作りコーナー(チャンゴ)、楽器演奏コーナー、学習コーナー(「拳は風穴をあけた」ビデオ鑑賞と話し合い)、料理コーナー(チヂミづくり)の各コーナーを体験しながら、楽しいひとときの中で絆を深めました。卒業生がリーダーになった縦割りのグループでの実践は、大変よい成果をあげたように思います。

校種別 国籍別記載事項 総 数 日本語指導が
必要な
子どもの数
韓国・朝鮮 中 国 台 湾 ブラジル フィリピン ペルー
小学校 42 91 0 0 0 0 133 88
中学校 21 28 0 2 0 0 51 35
63 119 0 2 0 0 184 123
 
 (3)門真地域で特色ある学校といえば、どのよう実践が行われていますか。
 門真地域の特徴として、中国人の子どもが多いことがあげられます。門真南小にはおよそ50人、水島小には40人、脇田小にはおよそ20人ほどの子どもが学んでいます。これらの学校では、日本語の指導や日本社会への適応の指導にとどまらず、「自立支援通訳派遣」制度によって指導者を招いて、母語指導など民族としてのアイデンティティの保持、伸長を目指した取りくみをすすめています。しかし、母語と日本語のバイリンガルはうまく行っているわけではありません。むしろ、大変困難な状況と言えるでしょう。家庭内での親子のコミュニケーションに問題があるのも事実です。
 
(4)教師の取りくみとして特筆すべき点がありますか。
 門真地域の外国人の子どもの実態に対応するため、「進路」にかかわる取りくみをすすめてきました。一つは「中・高教員連絡会」を学期に一回開いています。そこでは、高校受験希望者の把握、生活実態を含むさまざまな情報の交換をすすめています。たとえば、この地域の長年の要請によって実現した門真なみはや高校の「外国人特別入試枠」についての情報交換、「入試問題のルビうち」「辞書持ち込み」「時間延長」「別室受験」など、外国人生徒に対する入試配慮事項の問題点の意見交換をすすめ、その改善点について話し合っています。(2001年度大阪府外教研究集会冊子の門真なみはや高校の実践報告参照)
 二つ目は、小・中学校教員連絡会です。この目的は、外国人の子どもにかかわる指導上の情報の交換、取りくみの引き継ぎを行うことです。
 三つ目は、日本語指導担当者の会議です。ここでは、日本語指導に関わることの意見交換、研究をすすめています。
 
(5)教職員組合、教育委員会などとの連携はどうでしょうか。
 門真地域では、ずっと以前から、教育現場、教職員組合、教育委員会、人権教育研究組織、校長会・教頭会が連携を密にして取りくんできています。地道な実践ですが、積み上げによって今日の実践方法、内容が共有されてきたと思っています。門真市外教の事務局員や推進委員に加わって、ともに取りくみを担っています。
 一昨年、入管によるいわゆる「不法」入国、「不法」滞在・就労の摘発で、保護者が子どもとともに入管に収容されるという事件がありましたが、この時にも緊密な連携を取りあって、子どもの権利を守るために、可能な限りのことはすることができました。
 
(6)門真市外教の運営上、何が課題だと考えていますか。
 若い人たちに、実践内容や運営の引き継ぎを一日も早くすすめなければと思っています。それは、これまで以上に活力を引き出すためにも大切です。また、行事が多すぎるように思うので、どううまく統合していけるか考えています。

むくげ165号目次へ


inserted by FC2 system