在日朝鮮人教育と教組運動
東大阪市教組執行委員長  林 二郎
 
 中国人の王克非(ワン・コーフェイ)老師が、10年間の東大阪市の公立小学校での中国帰国者の子どもたちの「民族講師(定数内講師)」にピリオドをうち、神戸元町の中華同文学校の先生になる。3月21日に開かれた「歓送会」で、王老師は10年間の感想の一つに『本名で働けてよかった』と、やや「意外」なスピーチ。ネイティブで日本社会の同化の圧力など意にも介さないと見えた王老師であってなお「仲間の日本人の励まし」に支えられての「本名」だったのだ。子どもの学習と生活の保障のため、親の就職、住宅探し、在留資格の問題での入管や領事館との交渉、病気治療・健康保険・生活保護の相談にと毎日走り回っていたからこそ、日本社会の外国人排斥の現実を痛いほど知っていたのだろう。そして彼のその活動の原点であり拠り所でもあったのが自身の本名での教職生活であり、東大阪の在日朝鮮人教育の切り開いた地平であった。

 2002年、日教組運動は完全学校五日制にともなう『地域に開かれた学校づくり』『総合学習』など教育改革が重要な課題となる。また憲法改悪に道を開く教育基本法の改悪(昨11月文科省が諮問)を許さない『生かし活かそう教育基本法』の運動も正念場を迎える。

 いずれの運動課題も、日教組”21世紀の公教育を考える委員会”中間報告『ともに学び共に生きる社会をめざして』(8月に最終報告)で提起されている「多文化共生の教育」「人権をふまえた、差別と向き合う教育」「共生・共育のネットワークシステムの創造」など在日朝鮮人教育とかかわるテーマと結びつく。

 30年前、「考える会」の活動と前後して始められた東大阪の在日朝鮮人教育や夜間学級の充実を求める運動の広がりと深まりは常に教組とともにあった。「真理と平和を希求する人間の育成」をめざしてきた教育基本法の改悪を教育現場の総力をあげて阻止することこそ、すべての子どもたちが大切にされる教育の実現を可能にすると信じている。


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