編 集 後 記
 
 先日偶々、入江昭さん(米ハーバード大歴史学教授、アメリカ外交史)のお話を聞く機会がありました(7月4日、関西大学)。昨年9月11日以降の合衆国での国家主義的、排外的風潮に対して、どう考えるべきかの内容でした。

 「合衆国の政策は4年ごとに変わる。NGOを中心とする合衆国の根本は少しも変化していない。日本には報道されていないが、多くの人々が現在の風潮に対抗する努力を続けている。ハイスクールの教師、特に社会科の教師が、アメリカンヒストリーを自国本位ではなく世界史の中に位置づけ直して教えようと、涙ぐましいまでの努力をしている。自分もその運動と関係を持っている。日本の教師たちはどうだろうか。」

 「1年間の会費10ドルか20ドルでNGOに参加できる。それでニューズレターが送られてくる。私もいくつか入っている。」

 「20世紀後半の世界の歴史の基本的枠組みは、冷戦などではない。1970年代に始まったNGOなどの民衆の運動、それこそが世界史を分ける画期的な出来事だった。戦争の世紀を克服するために、否応なく進むグローバル化の中で、世界に広がる民衆の運動とネットワークこそが将来への希望だ。」

 「どんなに悲惨で残虐な現実の中でも、理想と希望を語ることが大切だと思っている。」
 合衆国でも最近は退潮著しいと伝えられる「リベラル」の主張ですが、21世紀の唯一の希望としてNGOを語る姿には、迫力がありました。1970年代から始まった世界史の新しい段階、その一環に、私たちのささやかな努力もつながりたいと思います。(印藤)



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