「長橋小学校民族学級

　　　開設３０周年記念式典」を終えて

　　　　　　長橋小学校　小泉智行

　1972年の「南北共同声明」がきっかけとなり、その時の解放教育の盛り上がりと当時の教職員の熱い想いの中、11月21日に産声をあげた長橋小学校の民族学級は、今年で30周年を迎えることができました。そこで、去る2002年11月24日（日）に「長橋小学校民族学級開設30周年式典」と「祝う会」を行いました。

  第一部は、学校主催で式典をとりおこない、第二部は長橋小学校の民族学級を支えるアボヂ・オモニ会が主催で、祝う会をおこないました。

　当日は、関係各団体、旧民族講師、長橋小学校の旧教職員をはじめ、この30年間で長橋小学校の民族学級に関わりを持っていただいた方々や、多くのアモヂ・オモニ、近隣校をはじめとした教職員の方々の参加があり、総勢250名ほどで民族学級の30周年を祝うことができました。

  多くの参加者の中から代表して、第一部では大阪市教育委員会、部落解放同盟西成支部、在日本大韓民国民団西成支部、在日本朝鮮人総聯合会西成支部のそれぞれの代表の方から祝辞という形で話をしていただきました。その話の中から、この30年間の民族学級の取り組みに対するねぎらいや激励もいただき、また、朝鮮半島の統一に向けた想いも話されるなど、本校の民族学級をはじめ在日朝鮮人教育が「統一」の視点で取り組んできたことから、その実現を身近に感じさせる祝辞をいただきました。

　また、長橋小学校の民族学級を支えるアボヂ・オモニ会が主催した第二部「祝う会」では、連帯の挨拶として、金東勲氏、民族教育促進協議会、大阪市教職員組合から、本校の取り組みのさらなる充実と、民族講師の制度保障に向けた取り組み、また、制度のない中で子どもたちへの民族教育のために身を粉にして努力されてきた民族講師に対する感謝の言葉をいただきました。

　このような人たちの言葉を聞いていると、あらためて、本校の民族学級の果たしてきた役割の大きさと重さを感じずにはいられませんでした。一言で30年と言いましても、今回、式典と祝う会に参加してくださり、共に民族学級の30周年を祝っていただいた方々のお力添えがなければ、この日は迎えられなかったように思います。

　この30年の間に、民族学級は、社会の流れや変化もあり、少しずつその位置づけが変わってきているように思います。「奪われてきたウリマルを返せ」という言葉のもとに開設した民族学級ですが、今は、日本籍の（正確には二重国籍を有する）子どもたちが増えていき、また、親の世代も三世、四世となる中で、民族との出会いが少なくなってきているのも事実です。しかし、出会いが少なくなったといっても、知らず知らすに生活の中に民族的な部分を持ち合わせているのもまた事実であると思っています。そんな状況の中で育ってきている朝鮮人の子どもたちに、民族学級は「自分の民族と出会う」場となり、「自分の民族に気付く」場となってきています。そこで問われるのは、クラスでの在日朝鮮人教育です。クラスの中で、朝鮮人の子どもたちが自分の民族と向き合い、当たり前のように民族性を表に出していけるか、また、それを受け止めるまわりの日本人の子どもたちが、どれだけ正しく今の在日朝鮮人児童の立場を理解できるかが、あらためて、重要なこととして問われてきていると思います。

　そんな新たな課題を確認し（正確には、今も昔も変わらないのかもしれませんが）、このたび、『ウリマルを返せから３０年』という冊子を出すことになりました。内容は、主に、クラスでどのような実践をおこなえばよいのかについて、皆さんと共に考えていく材料にしたいというものです。一冊1000円で販売していますので、興味のある方は長橋小学校までご連絡下さい。なお、売上金はすべて民族講師へのカンパになりますので、そのこともお知らせしておきます。

　30年記念式典は、このように、多くの方に支えられて迎えることのできた30周年でありました。しかし、またその一方で、今後も長橋小学校の民族教育（民族学級の取り組みと在日朝鮮人教育の取り組み）をもっと広めていくには、民族講師の制度的保障が確立されなければなりません。そうした運動への決意を含めて、30周年は終わりではなく、単なる通過点の一つとして、今後も様々な取り組みに邁進する想いを強くしています。

  最後になりましたが、準備の期間が短く、準備不足でいろいろな方々にご迷惑と不愉快な想いをさせたかもしれません。この誌面を借りて改めてお詫び申し上げます。また、当日参加して下さった方々に対しても、今後の長橋小学校の取り組みへの後押しとご協力をお願いするとともに、民族講師の制度保障に向けた運動を、力を合わせて闘っていきたいという決意の言葉で、文章を終わらせていただきたいと思います。

　本当にいろいろな意味で、ありがとうございました。今後も、長橋小学校の民族学級、在日朝鮮人教育をよろしくお願いします。 

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