「戦後60年」の節目の年を迎え、歴史からの学びを今日的課題とリンクさせた

多民族・多文化共生教育の内実を創ろう!

大阪の教育の全国発信を! 北海道教研から思うこと
宮木謙吉(北巽小学校)

 第54次日教組教研が179日、札幌で開催された。「国際連帯の教育」分科会では、大阪市東部の地域実践とリンクした勝山中学校の乾啓子さんの「私は韓国と日本の二つの文化を持っている」の実践も含めて20本の報告をもとに討議が進められた。

 1日目は主として「足もとからの国際化」。

 この視点から、大阪をはじめ韓国・朝鮮にルーツを持つ子どもの民族的アイデンティティを確立する実践を基点とし、新渡日の子ども達の実践としてモンゴル、フィリピン、ブラジル、ペルーの子ども達の取り組み、韓国の学校や海外で活動する人々との交流の取り組みが報告された。

 実践の広がりと深まりが見られたものの、新渡日の子どもの実践については、

 @子ども達の集う場の設置

 A指導者体制の確立

 B多民族・多文化共生教育の推進体制の確立

 C地域・保護者組織との連携

 D行政施策の確定

 Eそのための組合運動・民族団体、外教組織との連帯

 といった「民族学級実践」に集約される大阪の実践が創り上げてきた視点が不可欠であることを改めて確認することとなった。日本社会にとって今日こそ「民族教育権の確立」が急務である時代はないことが痛感された。このことはひとえに大阪の実践の確かさと普遍性を逆に証明すると共に、各地の実践が大阪の実践との重なりを求めてやまないという、教育運動の大きなうねりを必要としていると言っても過言ではないと思う。

 

 第一日目の論議の中では、日本社会に外国人と共に暮らす方向がないことや、新渡日の子ども達の日本語教室はもとより奨学金制度をはじめとした民族教育権の確立が急務であること、また、かつての在日韓国・朝鮮人に重なる新渡日の子どもや親達の置かれた実態を直視しなければならないことが出された。改めて現場の切実なニーズに応える行政施策を実施するよう働きかけていく必要がある。全国教研を通じて、マイノリティ実践がマジョリティの実践として学校や地域の文化を豊かにし、同化傾向の強い日本社会を「多民族・多文化」な社会へと変革していく展望を内包していることを、大阪の実践をもとに発信しなければならないと、決意も新たにした次第である。

 二日目にかけては「豊かな世界認識」が討議の柱。特に、イラク戦争をテーマとした実践やクルド人難民の高校生を学校に受け入れた実践など、今日の国際情勢を反映した実践報告が印象的だった。「人権と共生」を軸とした平和教育の実践をどう組織的に進めていくのか、また、日本の法制度も含めて日本社会の排外的体質をどう草の根的に変革していくのかといった多民族・多文化共生教育の基本的な実践課題を確認することとなった。また、「確かな歴史認識・豊かな世界認識」を育てる実践の基底に、マイノリティの子どもを中心に据えた総合的な人権教育をはじめ、グローバル化していく世界の中でマジョリティの課題としてマイノリティの問題を見据え、「地域からの国際化」をどう進めていくのかというわたし達の実践スタンスを定めなければならない。この点で、大阪で結成され活動を積み上げてきた「民族教育ネットワーク」の存在の大きさを改めて確認することができた。

 メディア・リテラシー育成の実践や「国連持続可能な開発のための教育の10年」の内実を創りあげること、同時に国内の環境、人権、開発、ジェンダーといった今日的課題を多民族・多文化共生教育とリンクさせ、わたし達のすすめる教育実践を全国的な視野と課題から再構成しながら、より一層の努力を重ねていきたい。

 「戦後60年」の節目の年を迎え、歴史からの学びを今日的課題とリンクさせた多民族・多文化共生教育の内実を創ろう!

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