主張 確かな歴史認識にもとづいた教育実践を推しすすめよう!
印藤 和寛
 四年ごとに行われる中学校教科書採択作業が終わった。ゾンビのように立ち現れて横行する右翼政治家たちに後押しされ、「人権・平和と民主主義」を覆して「排外・戦争と国家権力への恭順」を説教する扶桑社版教科書が、少数ではあるが採択されてしまった。「歴史教科書は、市区町村立で栃木県大田原市や東京都立の中高一貫校4校、杉並区などで計5000部で採択率は0.4%。公民も0.2%。2001年(0.038%)に続き、採算ライン10%を大幅に下回る」(毎日新聞朝刊8/31)。

 これについて韓国の潘基文(パン・ギムン)外交通商相は「日本に健全な市民社会が確固としてあることを再確認した」と高く評価したが、この夏の各新聞紙上に掲載された韓国市民団体の大きな意見広告は、ある意味でのショックを私たちに与えた。韓国の成長する民主主義が、「韓流」だけではなく、今や周辺諸国の市民社会を手助けしつつある。

 教科書の記述はさらに後退した。「強制連行」「従軍慰安婦」の事実と意味づけ、教える手順を私たちは本当に持っているだろうか。「竹島(独島)」ひいては「日露戦争と第二次日韓協約(乙巳保護条約)」についてはどうだろうか。日本市民社会のもつ力が「このままじゃ日本は地獄におちるよ」(故後藤田正晴)という心配を杞憂に終わらせることができるかどうか。再び歴史が一回りした時に、私たち教職員が言い訳を探すようなことにならぬよう、今「ことば」(自民党の憲法改悪案前文も「人権・平和と民主主義」などという言葉で飾られている)ではなく「教育運動と実践」で私たちの歴史認識を形あるものとし、周辺諸国と後世の市民社会を少しでも手助けしたいものだ。

 今夏の「歴史の記憶と民族教育」をテーマとした民族教育フォーラム2005の成果と学習をもとに、教育現場での実践と民族学級を中心とする制度構築を進めよう。その力で教組運動への攻撃をはね返し、憲法・教育基本法改悪の動きを迎え撃とう。
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