2月日教組教研「国際連帯の教育」分科会報告
歴史からの学びを今日的課題とリンクさせた
多民族・多文化共生教育の内実を
北巽小学校  宮木 謙吉

 日教組第55次教研全国集会が225日から27日まで三重県で開催された。「国際連帯の教育」分科会は松坂市の会場で、国際化が進み多民族化する日本社会の子どもたちの教育がどうあるべきなのかについて、23本の各地の実践報告を持ち寄り熱い討議がなされた。

 既に外国人登録者の数は200万近くに及び、10年前に比べ倍増、また、かつて外国人登録者数の大半を占めた韓国・朝鮮籍の人々は現在30%台前半となり、中国、フィリピン、ブラジル、ペルー等新渡日者が増加するなかで、多民族・多文化する日本社会において民族的マイノリティの子どもたちの教育の充実が求められて久しい。その課題に正面から応えるのが本分科会の使命である。

 この分科会では、大阪を基点とした在日朝鮮人教育の実践と運動が、新渡日の子ども達の教育にどのように重ねられ、民族的アイデンティティの確立と自立を高める教育運動としてどう展開されているのかを検証軸としているといっても決して過言ではない。換言すれば、大阪が発信した実践が、日本社会における民族的マイノリティの子ども達の実践「モデル」となっていると言ってもいいのかもしれない。大阪の仲間の実践が、国際連帯の教育実践の骨格を形成してきたとも言えるだろう。そして、その教育は「日本人教育」としては「人権と共生」「反差別」の教育として進められ、「同化」と「排外」を強いる日本社会の変革の運動と一体をなすものだった。

 今年度、本分科会は政治状況の排外化と外国人籍児童の不就学率が約10%という深刻な事態のなかで開催された。大阪からは、マスコミにも大きく取り上げられた大阪市立中道小学校の「子どもと保護者の願いと共に、民族学級100校目」の記念碑的な実践が報告された。組織教研としての特徴的なレポートとしては、民族的マイノリティの子どもたちのアイデンティティ保障の実践をはじめとして、韓国の教職員組合と共同制作した「朝鮮通信使」教材実践(広島)、「関東大震災」の児童作文の教材化実践(横浜)、「強制連行」の史実を掘り起こす運動(石川)や「強制退去」問題への取り組みなど多岐にわたる実践が報告された。いずれも日本社会の歴史と現実を鋭く投影しながら、共生社会の実現に向けた現場や地域からの実践報告であったが、時代を反映してか、全体の傾向として世界認識や国際理解に関わる報告、自主教材作りや聞き取り活動、「強制退去問題」などが多数をしめ、民族的アイデンティティの確立を求める教育実践の報告が少なかったことが心残りであった。

 全体の討議を通じて、外国人の子ども達や「ルーツを持つ子」「つながる子」の学校の中での“居場所”の大切さが改めて確認された。具体的には「民族学級」「日本語教室」「外国人青年の会」などの実践としてすすめられているが、学校の中にこそ設置されるべきであることも痛感された。分科会討議には出なかったか「アイヌ語教室」も実践射程に位置付けなければならない“居場所”であることは言うまでもない。次年度へつながる実践課題である。

 外国人の子ども達への教育施策の拡充や外国人教員の身分保障など日本社会・教育行政の責務についても指摘された。組織教研としての原点に立って、外国人の子どもに開かれた学校教育と学校文化の創造を目指さなければならない。とりわけ、全国津々浦々で、日教組のネットワークのもとマイノリティの子ども達が「集い」、「自分らしさ」が受け入れられる場づくりや進路を保障する実践が急務である。マイノリティの子どもを中心に据えた総合的な人権教育をはじめ、グローバル化していく世界の中でマジョリティの課題としてマイノリティの問題を見据え、「地域からの国際化」として発信することも必要である。

 戦後61年の第一歩を、歴史からの学びを今日的課題とリンクさせた多民族・多文化共生教育の内実を創ろう。(宮木謙吉)

     
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