民族教育ネットワーク
阪神教育闘争58周年記念集会
家庭・学校・地域を結ぶ民族教育
報  告
日時 2006年5月14日(日) 2時〜4時40分
場所 東成区民センター(地下鉄今里)

記念集会がめざしたもの

 今回の記念集会のテーマ「家庭・地域・学校を結ぶ民族教育」は、昨年1228日になくなられた弁護士金敬得さんの大阪や東京での追悼集会を受けて、『わが家の民族教育』(金敬得編、新幹社20063月発行)をヒントに企画されました。在日朝鮮人の家庭での教育のあり方、地域の子ども会、民族運動と日本人との関係、民族学校や民族学級が朝鮮人の側からどう見えているか。また、2001年の大阪市教育委員会「在日外国人教育基本方針」をもとにした日本の学校現場が今何に直面しているのか。全国的な視点でこの民族教育の中身を点検し前進させるのが目的でした。従って、方針発表後に議論されたような「朝鮮入差別などもうないのではないのか」「ことさらに本名などと言うのは人権侵害ではないのか」という声が日々大きく聞こえるのに対して、日本人教職員の立場であらためて在日朝鮮人の声を聞き、その現実、真実について共通理解を深めることが必要でした。

当日の資料を見たおどろき

入居差別裁判については、当日の資料にも掲載されていたように、現在尼崎入居差別訴訟控訴審(原告李俊煕(イ・チュニ)さん・朴絢子(パク・ヒョンヂャ)さん)が大阪高等裁判所でおこなわれており、康由美さんの裁判は大阪地方裁判所でまだ始まったばかりです。康由美さんは前に民族講師として、また府立西成高校の朝鮮語講師として活躍され、現在は新進の弁護士として活動をはじめられている方ですし、李さんも兵庫韓青同委員長という民族運動のばりばりの活動家です。そうした人たちでさえ、面と向かって、韓国人だからだめだという差別を受けて、最初に出た言葉が共通に「日本生まれの日本育ちですから、非常識なことはしませんよ。何とか家を貸してもらえませんか」「日本で生まれました。日本語も話せます」だったということ、このことにひどい衝撃を受けました。

家賃5万円の部屋を「韓国人だから」貸さないということがまかり通りかねない。たいていはそこで「また別の所を探そう」となる。日本人はみな一様に「ええっ、そんな差別がまだあるの」。文句を言えば、家主の自由、だけでは以前の鄭商根さんの入居差別裁判の判例があって通用しないので「ペット厳禁なのに猫を飼っているから」「ファミリー限定なのに友人とシェアするというから」など後から理由をつけて合理化し、それが裁判では寛容に理解されてしまうのです。教育現場でもこうした現状はもっともっと子どもたちに話す必要があります。今日はこんな裁判の傍聴に行ってくる、と言って出かけて、次の日にこうだったと報告しました。どんな子どもでも理解します。その中から、現実の社会の暗黙のしくみに対して、裁判制度について、人間の権利について、在日朝鮮人について、自分の身に付いた考えを深めていくのではないでしょうか。

「日本人と変わらないのに差別するのは不当だ」という35年前の日立就職差別裁判の最初の段階から、日本人と在日朝鮮人の基本的な関係性は、一体どう変化したというのでしょうか。ほんの少しではあっても、そこからすぐにとって返し、韓国人であることを当たり前のこととして自分でも認め、またそうした彼らと連帯できる日本人の関係が生まれたこと、このことの大きな成果と、不十分さを、ともにきちんと認識しなければなりません。

「なんでわたしが住んだらあかんねん」と言う康由美弁護士とともに、多くの若い弁護士のみなさん(日本人、朝鮮入)がこの裁判に協力されています。12月になくなった故金敬得弁護士が最初韓国籍のまま司法修習生になろうとして最高裁判所から拒否されたとき、その直前まで通名を使って生活されていたことなども思い返され、そのようにして最初に韓国籍で弁護士になられた金敬得さんに多くのよき後輩が生まれていることを、この集会に来ていただけなかった残念さ、追悼の気持ちとともに思っていました。

「重度(ぺ・チュンド)さんの講演

川崎市ふれあい館館長で、かつて全国民闘連代表として活躍され、毎年夏の全朝教大会でもあいさつをお聞きしていた「()さんですが、30年以上になる神奈川県川崎市桜本での地域活動のようすや現状とともに、ご自分の子どもの教育をめぐってのさまざまな問題と1986年にできた川崎市「在日外国人教育基本方針」について話されました。

現在、地域運動を継承していく後継者の問題、本名についての柔軟な見解に対しては、あとで質間も出て、もっともっと色々議論が必要だと思いました。また、金敬得さんの東京での活動も考えあわせて、関西との地域性の違いは大きなものがあります。こうした交流をもっと進めていかなければならないと痛感しました。

金信(キム・シニョン)さんのお話

神戸在日コリアン保護者の会が昨年末「神戸の未来を担う子ども育て賞」(神戸市教委)を受賞し、長田区蓮池小学校のオリニソダン(民族学級)がさまざまな困難を乗り越えながら定着拡大し前進しているようすが話されました。また、424阪神教育闘争記念碑を建てる会が発足して、神戸でも424阪神教育闘争に焦一点を当てそれを継承する教育運動が起ころうとしています。神戸と大阪も、互いに連携し助け合って進まなければなりません。

付記

一週間後の521日、エル大阪で「済州島四・三事件58カ年記念大阪集会済州島四'三事件と戦後日本」が開かれました。韓国済州MBC制作の「四・三ドキュメント」が上映され文京洙さんの報告があったほか、多くの証言がなされました。()

     
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