国際クラブと大阪市教育振興基本計画

〜大阪市内外国人教育の新たな状況〜

 

 2017年3月27日に大阪市教育委員会から1枚の通知文書が出された。これまで行われてきた民族学級・民族クラブの名称を国際クラブにするというのが主な内容であった。

 新年度直前というタイミングであったため、4月からは民族学級の名称が使えない、外国にルーツある様々な子どもと日本人も一緒に教育する活動に変わるのでは等の情報が飛び交った。しかし、4月に行われた教育委員会からの校長への説明では、これまで行われてきた民族学級の取り組みは基本的に変える必要がないこと、活動場所に関しては、法律上専有できないので教室表示の変更等が求められるというような内容であった。(民族学級の名称等をあわせて掲示することは可能)このような状況が生まれた背景には、韓国朝鮮人対象の民族学級の取り組みを問題視する議員の圧力があった。これまでも、民族学級がつぶされるのではという不安の波が押し寄せる状況はあった。それを何とか跳ね除けながら、現状を維持するというのがこれまでの委員会や運動サイドの姿勢であった。

 しかし、今回の状況はこれまでとは違った点がある。それは色々な経緯の中、大阪市教育振興基本計画の変更案として、従来の国際理解教育を多文化共生教育に発展させることが大きな課題の1つとしてあげられたことだ。全ての外国人生徒の民族的な自己を育むこと、また日本人の子どもたちが外国人の存在を尊重できる教育をすることが大阪市の大きな課題の1つとして改めて位置づけられることになった。この間、攻撃対象にされてはとその存在をあいまいにせざるを得ない感があった民族学級、民族教育(文面でこのような表記が使われているわけではないが)が、大阪市の教育の課題としてきちんと位置づけられることになったのだ。もちろん、在日外国人の歴史や民族的なアイデンティティーの育みが語られることなく日本への同化を促すような教育や、英語教育だけが尊重されるような国際理解教育にならないのかなど、気をつけなければならない要素も含まれている。

 実際の学校現場では、中国やフィリピンにルーツを持つ子どもたちの自分たちの文化や歴史を学ぶ活動が一部の学校ですでに始まっている。また、わずかではあるが、民族学級の時間帯に併行して全ての子どもたちが様々なルーツを持つ人達と共に生きていくことについて学ぶ活動が取り組まれている学校もある。日本人児童生徒の外国人に対する意識をしっかり育むことなしには、外国人児童生徒が安心して過ごせる学校や社会には変わらないという思いのもとにすすめられている。

 しかしもう一方の現状として、韓国朝鮮以外の民族講師的存在はほぼゼロに等しく、活動の予算的な措置も取られていない状況がある。また韓国朝鮮人を対象とした民族学級においても、民族講師の身分保障の改善は全く行われておらず厳しい状況が続いており、数年前からは新たな民族学級の開設がとまっており、既に開設されている民族学級においても、児童生徒数の減少等による統廃合の問題も出てきている。また、40年以上取り組まれてきた民族の合同サマーキャンプの位置づけが2017年度に大きくかわり、不安や戸惑いが生まれている。そのほか、道徳教育の教科化がすすめられるなか、これまで取り組まれてきた在日外国人のテーマもふくめた人権教育が行いにくくなる状況が見え始めている。

 このような状況を踏まえると、大阪市における在日外国人教育は次の時代にむけた新たな仕組みを構築する大きな転換期にあるといえる。その中でまず大事なことは、すべての子ども達を対象に自尊感情を持ち得る様々な教育実践を創造し共有することである。また、異なるルーツを持つ子どもたちが互いに理解・尊重しあえるような教育実践作りも必要である。さらに、このような教育が成立し得る環境を整える要求運動を進めていくことも必要である。

 大阪市における組合活動に対する不当な扱いが続く異常な状況のなか、教職員が主体性を持ち、保護者との絆や保護者どうしの絆、さらにPTA組織や地域との連携を深めながらすすめていけたらと考える。様々な準備と労力が必要で簡単に進められることではないが、進んだ先には新たな景色と展望が見えてくると確信する。

                                    (正本順一)

 
 
     
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