宋 基 燦 T.民族学級の実践から見えてきたもの 日本の小学校 現在、日本で行われている小学校教育は、完璧に文部科学省の管理下に置かれており、また文部科学省の立場から見ると、朝鮮人の子どもは日本の小学校に存在しないことになる。(Eriko Aoki) 民族学級(Ethnic Class) ‐日本の公立学校における民族教育 ‐阪神教育闘争と覚書民族学級 ‐72年型民族学級ー大阪長橋小学校 ‐現在大阪を中心に約170ヶ所の民族学級が存在(民族クラブを含めて) 民族学級の目的 ‐母国の文字や言語、歴史、文化などの学習を通じて、朝鮮人としての自覚と誇りを育てる。 ‐今までの民族学校(朝鮮学校)で行われてきた祖国志向的民族教育ではなく、「在日」という現実に焦点を合わせた民族教育の実施。 民族学級の教育的実践 ‐本名を名のる ‐象徴の使用 : ウリマル、ウリナラ ‐エスニック的区別の経験は子どもたちに「朝鮮人」としての自分を再発見させる。 しかし、民族学級の民族教育は、獲得された「エスニック的自覚」の中身を「誇り高きもの」で満たすことには充分ではない側面がある 「朝鮮人」というエスニック的発見と抵抗 「日本人になりたい」 在日同胞若い世代の心理的特性 ‐日本的位階秩序: 天皇を頂点とし、部落民に至るカースト制 ‐民族集団として日本人の異民族に対する態度は、結局日本内部の人間関係をそのまま延長・拡大したものである。 ‐内面的天皇制(尹健次): 文化的日本化 → 日本的位階秩序の内面化 → outcasteとしての自分発見 → 劣等意識 →アイデンティティ形成障害 ‐劣等意識:物事を序列意識で考える傾向を見せることの原因 ‐日本的位階秩序の内面化 → middleman minorityになる危険性 U.「力」としてのアイデンティティの可能性 危機としての「在日韓国・朝鮮人」 Identity Crisis と社会病理 自殺 : 日本人の約2倍(李節子、1999) 離婚 ; 日本人の約5倍(宋、1999) 「文化資本」としてのアイデンティティ? ・「力」としてのアイデンティティ:新たな競争力として考えられる「肯定的アイデンティティ」の力 多くの在日コリアンたちがアイデンティティの混乱による苦悩と試行錯誤を経験しており、それによる苦痛を経験している中、朝鮮学校を卒業した在日コリアンたちの場合には、そのようなアイデンティティの混乱を見受け難い。自分が誰なのかについて悩まなくともよいということは、一個人にとって次の段階に進むための資源であり「力」にもなり得るということを、朝鮮学校を卒業した在日コリアンたちが見せてくれている。多くの場合、朝鮮学校の卒業者たちは明るい性格と肯定的な自我観を持っている人々が多く、これは朝鮮学校独有の教育と、それによって相対的に幼い時期から確固たる民族アイデンティティを身体化させたためである。彼らに「日本人」は少なくとも準拠集団ではなく、「朝鮮人という自分」は忌み嫌い、隠さなければならない存在ではない。アイデンティティについての苦悩にエネルギーを消耗しなくてもよいということは、人生の方向設定において大きな資源になり、実際に日本社会の各部門で活躍している朝鮮学校卒業生たちは多い。ここで、朝鮮学校で育まれた強力な民族アイデンティティは他の在日コリアンと比較する時、一つの「象徴資産」もしくは「力」になることができるのである。少なくとも民族アイデンティティの再生産という面から見る時、そしてその民族アイデンティティの効果を考える時、朝鮮学校の民族教育が民族教育全体とエスニック・マイノリティの教育に示唆するところは非常に大きい。 V. 朝鮮学校の民族教育 代案教育への可能性 学友との密接な関係と友情を強調する教育課程は、受験勉強中心、meritocracyの現代教育に代案教育的意味を与える。 ‐集団主義教育 ‐共同体教育 朝鮮学校学生の最大の競争力「EQ」 ‐EQとは、自分と人の感情を理解する能力と、人生を豊かにする方向に自分の感情をコントロールできる能力を言う。 ‐ソジョ(クラブ)活動 ‐2人組学習 ‐先生との関係 人間を幸せにする教育 |